リー・チャイルド著 ”前夜” 講談社文庫より抜粋
海兵隊将校の夫に死別して4年、パリのアパルトマンに一人住むフランス
人の母を主人公と兄が医者の知らせで見舞いに訪れる。末期癌で死期を悟
っている母。
おれたちに会えなくなって寂しくない?と問う兄に母は”質問がまちがっ
ているわよ。わたしはいずれ死ぬ。寂しくなるのはあなたたちなのよ。わ
たしは夫に死なれて寂しい。(中略)それが人生よ。死んだ人を偲んで寂
しいと思うのが”
”ほんとうは違うことを聞きたかったのでしょう?息子たちのことをもう
気に掛けないのかって”
”とっても気になる。、、、映画の途中で映画館から出て行くようなもの
なのよ。、、、あなたたちがどうなるのか、絶対にわからない。、、、そ
れがつらいわ、、、遅かれはやかれ映画館から出ていかなければならない
””あなたたちにはもうわたしは必要じゃないのよ。すっかり大人になっ
たのだもの。わたしの仕事は終わったわ。それが自然なことだし、いいこ
となのよ。それが人生。だからわたしをいかせて。”
2月にいった兄。いまも闘病する弟。そして自身。遠くない未来、映画館
を出ていかなければならない。だが出ていくのがショッピングセンターの
シネコンでは寂しい。今は姿を消した華やかな劇場のファザードから立ち
去りたいものだ。
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